優しい止まり木

会社の人との飲みの後、まっすぐホテルへ向かう。
ホテルの部屋に荷物を置いた後、1階にあるホテル併設のBarへ行ってみた。
去年も同様の仕事でこのホテルに泊まったことがあり、そのときからこのBarは少し気になっていた。
去年はちょっと遠慮して入らなかったのだが、
今年は勢いあまって入ってしまった。ちょっと酔っていたのかもしれない。


店はクラッシク音楽の流れるシックな雰囲気を漂わせていた。
年季の入ったバーテンダーが一人。
テーブル席に1組。
カウンターには誰もいない。
もちろんKEY'zは迷わずカウンターに腰掛ける。
Barに入ったことは2回ぐらいしかなく、しかも1人で入るのは初めて。ちょっと緊張する。
カクテルの種類も何もわからない状態で入るのは無謀もいいとこだが、
初老のバーテンダーは気さくに声をかけてくれる。


ウォッカベースで飲みやすいものということで、007を頼んでみた。
シェイカーの中で踊る氷のリズミカルな音。
ショートグラスに注がれたのは、
澄みきった透明ではなく空気を含んでやや白濁している。
そして、液体に浮かぶ少量の氷のフレーク。
もちろん、オリーブもついている。
一見マティーニと変わらないが、口当たりはやわらかく優しい。
差し出された一杯のカクテルと、その名の由来を語ってくれるバーテンダー
カクテルをちびちび飲みながら、他愛もない世間話をする。


2杯目はその店のオリジナルカクテル、春の息吹を頼んでみた。
なんでも、娘さんの誕生日を記念して作ったカクテルだそうだ。
こちらもシェイカーを使う。
シェイキングすることにより、空気を含んで口当たりをやわらかくし、氷から溶け出す水で味を丸くするらしい。
実際に飲むと、
最初口当たりやわらかく、味は丸い。
真ん中でブランデーの風味。
そして最後は桜リキュールの香りがふわっと駆け抜ける。
娘を思う親の気持ちと言われて出された一杯。
久々に胸が詰まる思いがした。


印象に残ったことといえば、
バーテンダーが「Bartender」(Super Jump掲載)という漫画を薦めてきたのはかなり意外やった。
原作は「ソムリエ」で有名な城アラキ
初老のバーテンダーが漫画を薦めてくるとは思わず、ほんと気さくな人というか、ユーモアがあるというか。
2杯で2時間ぐらいとたっぷり時間をかけたが、久々に有意義なゆっくりとした時間を過ごした。


*追記
後で知ったことだが、カクテルはそれなりに早く飲まないとだめらしい。
上記の飲み方はだめみたい。そういうことはおくびにも出さず、世間話に付き合ってくれたバーテンダーさんはやっぱ年季が入ってるなあっと。